◯序章
はじめに「まやかし」の技術があった。まやかしとは、五感に働き掛けて、まことしやかな幻術で聴覚や嗅覚を錯乱させる現代の先端パラノーマルテクノロジーである。
それを用いてsubjectを混迷に至らせる計画があった。
そして、人生の記憶と性格のデータの技術が成功するに及び、むしろ、dominatorたちの蛮行が暴かれてしまうことを危惧し、subjectの抹殺を決行することとした。
◯本編
TV局は後世に伝えるイベントを企画した。
株式操作が可能な、Sとの協力による計画であった。また、 共同した会社と組織は多数に及ぶという。
相互思考盗聴の発表に関するイベントである。
その為に、subject(生け贄)が必要であった。
相互思考盗聴による思考流出の拷問の計画であった。
20XX年、インターネットで不謹慎な投稿をした者が選ばれた。Aは統合失調症であった。
計画にはハッカー集団を含む集団ストーカーにAのストーキングを 注文し、大病院の隔離病室への監禁に成功した。
大病院では拘束され、奇妙な体験が毎日のように続いた。
事件を聞くに及んだ、オンブズマン氏はこの事件をある時、『 インスピレーション』と鳥瞰した。
ついに相互思考盗聴、つまり『テレパシー』を発現したAは興奮した様子であった。
そして、 監禁状態のAをSと大病院は直ぐに抹殺の働き掛けに及んだ。
Aに怪我を負わせたものの、殺害には失敗した。
Aは病院において、ぞんざいな扱いを受けながらも、 退院に漕ぎ着けた。
実家に戻るといわゆる電磁波が発動した。
Aは退院後一、二ヶ月すると、大病院のまやかしに現れた所長、 と呼ばれるビジョンがテレパシーに現れるようになった。
所長は、場所を問わず、マインドコントロールを行い、 Aを幻術に陥れた。
所長の人心掌握は強力であり、 仲間であるテレパシーの相手方とともに、 Aを幾度となく自殺未遂へと駆り立てた。
一方、所長は大病院の常軌を逸した乱暴な扱いに、 Aに「チャレンジ」してみないかと、破産させるために持ち掛けた。
Aには証拠といえるものが思い当たらなかった。
だが、 所長の虚実入り混じった「人生」の話や病棟での話を参考にし、 筆を走らせることとした。
それは、五感のハッキングによるAの人生の記憶のデータを使った、隔離病棟における、五感のクラッキングを利用しての自殺企図へ及んだ概観の手記であった。
「人生の記憶と性格のデータ」とは五感のハッキングによるものであったのだ。
一方、集団思考盗聴(テレパシー)とは、精神のハッキングとも言ってよいかもしれない。
相手方の言葉には、的確であり鋭い目線を持ったものがあった。
しかし、被験者は命を狙われている存在であったのだ。